平行写真

本書『平行写真』は、横位置の写真だけに限定された300枚の変哲のない光景がたんたんと連なる構成となっています。何の強要的な情感もない写真群が、『これは一体なんのためにまとめられた本なのか?』と、つかみきれないままに展開していきますが、わたしたちは次第に、富澤の隣に立って撮影現場を見ているような、一緒になって歩いていく=「平行移動」をしているかのような錯覚をもちはじめます……。 『 ぬくもりだの暖かさだの、そんなのは誤魔化しですよ。 僕は、人生の本当の姿を描きたいんです。』 小津安二郎 映画監督・小津安二郎氏はそんな言葉を残しています。写真/写真集という表現もその特性上、どんなドキュメントであろうと広義の「フィクション」の扉をくぐってしまいます。 しかし、決して「真実」を写せるわけではない写真/写真集というフィクションの中に入ってもなお、富澤の写真は「ただそこにある」「本当の姿」だと思わせてしまう、倒的なリアリティの光を放ちます。 この『平行写真』の、最初の写真の“ 前” にも、最後の写真の“ 後” にも、本から顔を上げればわたしたちの目の前には変わらない光景があるだけです。わたしたちの体には劇的な変化は訪れません。しかしそれは、この写真集がわたしたち自身の“ これまで” と“ これから” の「平行移動」と溶け合っているからなのかもしれません。
- 著者
- 富澤 大輔
- 出版社
- 南方書局
- 発売日
- 2023-05-17
- 価格
- 6,600円(税込・書誌情報提供:openBD)
- ISBN
- 9784991238529
- ページ数
- 312ページ
発売済み
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