自営業・フリーランスの社会学

「もっと自由に働きたい」と願いながらも、多くの人は会社に雇われ続けている。一方、生涯正社員として働くことが必ずしも最適解とは言い切れない不確かな時代を私たちは生きている。そのようななかで、やりがいも安定性も兼ね備えた働き方はいかに可能だろうか。この探究の鍵を握るのが、女性の自営業・フリーランスである。 そもそも、雇われない働き方を選べば自由になれるとはかぎらない。日本の社会保障や雇用慣行は「男性正社員」を軸に形づくられてきた。その外側で働く人々、とりわけ女性フリーランスには、低収入や低年金のリスク、家庭内での重いケア労働などの不自由が積み重なりやすい。このような不平等を生む雇用中心社会の構造を捉え直すことが、誰もが働きやすい社会を考える確かな基点になる。 そこで本書は、主にジェンダーの視点から自営業・フリーランスに着目して、働きがいや社会保障、副業と収入、家事・育児の分担、高齢期の低年金リスクなどの「働き方と人生の質」の関係を、独自の全国調査や公的統計などの計量データに基づいて解き明かす。さらには、映像作家や編集者、銭湯絵師など、自営的に生きる人々の実情に迫るコラムも所収する。 自営的な働き方を「周縁」ではなく「中心」に据えて、雇用中心社会の限界と、性別や年齢にかかわらず誰もが伸びやかに働ける社会への糸口を平易な言葉で探る一冊。 【目次】 はじめに――なぜ自営的な働き方に着目するのか 序 章 自営業層を捉える視点――自営的な働き方の何をどのように問うか  1 公的統計が示す自営業層の推移と本書の問い  2 フリーランスの微増・微減とその意味  3 雇用労働から自営業・フリーランスまでの捉え方  4 自営業層を理解するために本書で検討する実証的な論点  5 各章の概要  付記 本書で用いる社会調査データ 第1章 一九八〇年代以降からみる自営業層の趨勢――自営業・フリーランスはどのように変化してきたのか  1 世代交代しながらも高齢化する自営業層  2 サービス産業化する自営業層  3 専門・技術職/サービス職化する自営業層  4 自営業とフリーランスで異なる職種の構成 コラム1 映像作家として生きる 第2章 働くことの質からみる自営的な働き方――働く時間・報酬・意味・保障はどうなっているのか  1 自営業・フリーランスの週間就業時間と年間収入  2 「働くことの質」を意味と保護の観点から問う枠組み  3 分析①――「働くことの意味」を見いだす自営的な働き方  4 分析②――年金保険料が未納になりやすい自営的な働き方 コラム2 ガラス業を引き継いで生きる 第3章 副業からみる自営的な働き方の就業条件――副業はフリーランスの個人収入を高めるのか  1 副業をもつフリーランスの特徴  2 副業と収入の関係を捉えるための視点  3 分析①――副業時間の水準と比率からみた個人収入の傾向  4 分析②――専門・技術職との関係からみた副業時間と個人収入との関連 コラム3 酒屋店主と社会福祉士として生きる 第4章 無償労働からみる女性自営業・フリーランスの働き方――自営的な働き方は仕事と家事・育児を調整しやすいのか  1 自営的な働き方と無償労働との関係  2 自営業世帯の家事・育児を分析する視点  3 分析①――自営的な働き方でも女性に偏る家事・育児  4 分析②――配偶者の働き方・妻の稼得率からみる家事・育児 コラム4 銭湯絵師として生きる 第5章 自営的な職業キャリアと高齢期の暮らし――職歴の違いは生活のゆとりにどのように影響するのか  1 超高齢社会による自営的な働き方への関心  2 自営的な就業経験が高齢期に経済的な不利になる実態  3 分析①――男女によって異なる自営業・フリーランスを含む職歴パターン  4 分析②――自営的な働き方の職歴パターンによって異なる低年金・低所得のリスク コラム5 百年続けた印刷業から引退して生きる 第6章 コロナ禍前後からみる自営業層の福祉国家への態度――自営業者は所得格差の是正を求めるようになったのか  1 コロナ禍の自営業層と福祉国家への態度  2 自営業層の内部の異質性を考慮して検討する意図  3 分析①――コロナ禍で「揺れた」自営業層の福祉国家に対する態度  4 分析②――コロナ禍の「経済的な不安」と「経済的な支援」が態度をどう動かしたか コラム6 編集者として生きる 終 章 自営業・フリーランスから働くことを問い直す  1 計量分析から読み解く自営的な働き方  2 各章の知見からみえてきた新たな論点  3 自営的な働き方が私たちに問いかけるもの おわりに

著者
仲 修平
出版社
青弓社
発売日
2026-10-26
価格
2,200円(税込・書誌情報提供:openBD)
ISBN
9784787235817
ページ数
246ページ

発売まであと48日

    Xでシェア

    シリーズの既刊・続刊

    関連書籍