戦争と指導者
なぜ合理的に見える権力者は、非合理的な戦争に踏み切るのか

「2週間以内に決める」。その言葉が爆撃命令に変わるまで、2日余りだった。「キーウは72時間で落ちる」。そう見積もられた戦争は、いまも終わっていない。「日本必敗」。模擬内閣がそう結論した3か月後、機動部隊は真珠湾へ向かった。 3つの戦争はどれも、狂人の密室からではなく、資料の配られた会議室から生まれている。地図があった。統計があった。参謀も、法律顧問もいた。それでも、負けるはずの戦争が選ばれた。恐ろしいのは、彼らが合理的に見えることだ。 本書が測るのは、「合理的に見える」と「合理的である」のあいだに走る、細く深い溝である。過信、道徳化された怒り、自己欺瞞、排他的ナショナリズム——判断を戦争へ傾ける4つのメカニズムを取り出し、トランプとイラン危機、プーチンとウクライナ戦争、太平洋戦争という3つの決定の内側へ分け入る。素材の違う3つの事例に同じ物差しを当て、判定の基準は分析に先立って固定した。後出しの説明を、この本は自分に許していない。 問いは、開戦の是非ではない。警告はいつ儀礼へ変わったのか。届いたはずの反証は、なぜ「あと一押し」の燃料へ変わったのか。最後に、同じ圧力の下で戦争にならなかったキューバ危機の13日間が、「仕方なかった」という諦めへの静かな反証として置かれる。 本書を読み終えたあと、ニュースで「他に選択肢はない」という言葉を聞いたとき、あなたはきっと立ち止まる。それは決意の表明ではなく、危険な兆候かもしれないからだ。 【目次】 まえがき 序章 戦争は理性では説明しきれない 第1章 なぜ指導者は非合理的な戦争に踏み切るのか 第2章 トランプとイラン危機――威嚇、保証、自己欺瞞 第3章 プーチンとウクライナ戦争――過信と短期戦幻想 第4章 太平洋戦争――怒りと誤算の連鎖 終章 戦争はなくならないのか あとがき 巻末資料 付録1 判定の総括/付録2 危機判断の点検項目/初出一覧/略語一覧/ 図表一覧/索引 ※参考文献(1,012項目)は小社ウェブサイトでPDF公開(書籍に二次元コードを掲載)
- 著者
- 伊藤隆太
- 出版社
- 芙蓉書房出版
- 読者対象
- 専門書
- 内容
- 政治・国防・軍事
- 発売日
- 2026年11月7日
- 発売日の出典
- openBD
- 価格
- 3,800円(税込・書誌情報提供:openBD)
- ISBN
- 9784829509296
- ページ数
- 442ページ
- 判型
- A5判
発売まであと22日
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【目次】 まえがき 序章 戦争は理性では説明しきれない 第1節 3つの場面 第2節 問い――なぜ合理的に見える指導者が非合理的に開戦するのか 第3節 理性の説明はどこで止まるのか 第4節 本書の分析枠組み――4つのメカニズム、3つの条件、1つの過程 第5節 なぜイラン、ウクライナ、そして太平洋戦争なのか 第6節 方法――心の中を覗かずに、心理を検証する 第7節 本書の構成 第1章 なぜ指導者は非合理的な戦争に踏み切るのか 第1節 開戦の朝――「合理性の仮面」という問題 第2節 戦争はどこまで説明されてきたのか 第3節 2層の説明――直接検証する至近的メカニズムと限定的な上位仮説 第4節 開戦を導く4つの心理・政治メカニズム 第5節 どう確かめるのか――反証可能な検証デザイン 第2章 トランプとイラン危機――威嚇、保証、自己欺瞞 第1節 はじめに――「2週間以内に決める」という猶予はなぜ2日余りで消えたのか 第2節 分析枠組み――強制の回路と3つの安全装置 第3節 背景――核の閾値をめぐる危機と保証の信憑性低下の系譜 第4節 第1幕(2025年6月)――正式協議の中断後に続いた危機外交 第5節 第2幕とその後(2026年2〜7月)――拡大戦争と不安定な休戦 第6節 横断的な分析――2つの幕と追跡観察 第7節 競合説明とその残余 第8節 おわりに――威嚇を言葉にとどめる制度 第3章 プーチンとウクライナ戦争――過信と短期戦幻想 はじめに――「勝利」を先取りした論説 第1節 謎としての開戦――合理的説明はどこまで届くか 第2節 自己欺瞞――3経路を結合・増幅する機制 第3節 傲慢なバランシング――古典的リアリズムと自己欺瞞の接合 第4節 過信――短期戦幻想と大国復活の夢 第5節 道徳化された怒り――西側リベラリズムへの憤激 第6節 ナショナリズム――歴史神話による正当化と動員 第7節 想定される批判に答える 結論――なぜ「合理性」だけでは足りないのか 第4章 太平洋戦争――怒りと誤算の連鎖 第1節 序論――ワシントンから届いた1通の文書 第2節 分析枠組み――義憤バランシングとは何か 第3節 事例選択と方法――なぜ太平洋戦争か 第4節 戦争への道――三極構造、南進、対米交渉 第5節 競合理論の検討――何が説明され、何が残るのか 第6節 過程追跡――ハル・ノートの衝撃と3つの仮説 第7節 怒りと誤算の連鎖――鏡像の義憤とエスカレーション 第8節 反論への応答――反証条件と境界条件 第9節 影の事例――一般化可能性の予備的スケッチ 第10節 結論――怒りを見落とす戦略は危うい 終章 戦争はなくならないのか 第1節 本書の問いと説明対象――構造・人間本性・判断 第2節 合理性の3つの次元――手段・手続・認識 第3節 4要因の非対称構造――3つの経路と自己欺瞞 第4節 学術的意義――合理主義、新古典派リアリズム、進化政治学 第5節 反論と応答(1)――因果推論と研究設計 第6節 反論と応答(2)――科学哲学上の限界と擁護 第7節 暴力衰退説の再検討(1)――経験命題を分解する 第8節 暴力衰退説の再検討(2)――悲観的人間観との両立 第9節 悲観の上に立つ希望――賢慮を制度化する 第10節 結び――戦争はなくならないのか あとがき 巻末資料 付録1 判定の総括/付録2 危機判断の点検項目/初出一覧/略語一覧/ 図表一覧/索引 ※参考文献(1,012項目)は小社ウェブサイトでPDF公開(書籍に二次元コードを掲載)
著者について
伊藤隆太
政治学者。東京都市大学/群馬県立女子大学非常勤講師。慶應義塾大学法学部政治学科卒業、同大学大学院法学研究科政治学専攻後期博士課程修了。博士(法学)。広島大学助教、防衛大学校講師、慶應義塾大学特任准教授、防衛大学校総合安全保障研究科特別研究員などを経て現在。専門は国際政治学、安全保障論。人間の生物学的・進化論的特性から政治現象を分析する「進化政治学」の国内における第一人者として、精力的に研究・発信を行っている。主な著書に『進化政治学と国際政治理論』『進化政治学と戦争』『進化政治学と平和』(いずれも芙蓉書房出版)などがある。
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