ユドルフォ城の怪奇 下

悪漢の魔の手を逃れ、故国フランスに辿り着いた エミリーは、かつて結婚を誓ったヴァランクールと 痛切な再会を果たす。彼が犯した罪とはなにか―― 刊行から二二七年を経て、今なお世界中で読み継がれるゴシック小説の源流。 イギリス文学史上に不朽の名作として屹立する異形の超大作、待望の本邦初訳!  どれほど彼女がモントーニの悪辣さに苦しめられたかを聞くにつれ、憐れみと憤りの感情が交互に彼の心を支配することになった。彼女はモントーニの行為を語るにあたり、その罪深さを誇張するというよりは、むしろ控えめに話したのであったが、それでも、それを聴いていたヴァランクールは、一度ならず椅子から立ち上がり、その場から歩み去っていった。それは、怒りというよりは、自責の念に駆られてのことのようであった。 「わたしの苦しみはもう終わったのです」彼女は言った。「だって、モントーニの暴虐から逃れることができたのですから。そして貴方も元気そうだし――どうぞ悲しそうなお顔はなさらないでくださいまし」  ヴァランクールは前にもまして動揺した。 「エミリー、僕は貴女にふさわしい人間ではない」彼は言った。「ふさわしい人間ではないのです……」(本書より)

著者
アン・ラドクリフ、三馬志伸
出版社
作品社
発売日
2021-09-02
価格
3,600円(税込・書誌情報提供:openBD)
ISBN
9784861828591
ページ数
576ページ

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