バイリンガルな夢と憂鬱

本書が扱うバイリンガルはエリートではない。植民地や移民、亡命の結果として、好むと好まざるとにかかわらずバイリンガルであり、あるいはそういった多言語が行き交う状況を、小説という一言語使用が原則の形式で描くという、ある種不可能な命題に挑んだ作家たちである。 具体的には、アイヌ神謡集の知里幸恵、植民地台湾の複雑な言語状況を描いた佐藤春夫と呂赫若、「故郷」朝鮮からの引揚げ作家、金石範、李恢成ら在日作家、移民国家アメリカの日系人作家などである。とはいえ、ハーンやフォークナー、コンラッド、リービ英雄など欧米の文学の試みと比較しながら、いわゆる「在日文学」「外地文学」としてではなく、「ディアスポラ」によって特徴づけられる20世紀の世界文学として論じている。文学の本質に迫る批評であるとともに、ディアスポラ、とりわけアジアン・ディアスポラ研究にも貢献する、比較文学者の著者ならではの野心作。
- 著者
- 西 成彦
- 出版社
- 人文書院
- 発売日
- 2014-12-02
- 価格
- 2,800円(税込・書誌情報提供:openBD)
- ISBN
- 9784409160961
- ページ数
- 272ページ
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