魂の物差し 1998~2022

◆第三詩集 棒は原初的な道具である 恐らくは、われわれの祖先が 敵や獲物を打ち据えるために 木の枝か何かを手にしたことが 棒という道具の始まりだろう 棒はその単純さゆえに多用され 打ったり叩いたりする以外にも 手の届かない場所を探ったり 傾く何かの支えとして 絶えず暮らしの場に置かれてきた しかし棒は突然、見るも無残なさまで バギリと折れてしまうことがある この世界はある瞬間 非常にバランスを欠くことがあって 一時的に膨大な負荷が 一本の棒にかかってしまうのだ また、見た目には堅固であっても 棒にはその実、愚直で脆い側面がある ここにある一本の棒 それは私たちの祖先が手にしたままの姿で 確かに今も存在している しかし、棒はもはや 日々組み替えられていく世界の中で その居場所を失いかけている 棒に触れると 遠い岸辺にある小石のように 冷たい (――「棒」より)
- 著者
- 橋本和彦
- 出版社
- ふらんす堂
- 発売日
- 2023-10-27
- 価格
- 2,500円(税込・書誌情報提供:openBD)
- ISBN
- 9784781415901
発売済み
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