AI時代の労働・協働・公共性

人間は何のために働き、生きるのか

「AIは仕事を奪うのか」という問いを超えて、社会思想史を辿って労働の観念を問い直し、新たな時代の働き方・生き方を探る。人が人とつながり何かを一緒につくる関係まで企業が測定し所有する時代に、人間が働くこと、その先にあるものを考える必読の一冊。

著者
山崎 憲
出版社
明石書店
読者対象
一般書
内容
社会
発売日
2026年10月22日
発売日の出典
openBD
価格
2,700円(税込・書誌情報提供:openBD)
ISBN
9784750361857
ページ数
272ページ
判型
A5判

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目次

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プロローグ AIは仕事を奪うのではない  第1節 協働がスコアになる   業務インフラはいつセンサーになったのか   成果ではなく「つながり」が測られる   見えない協働はなぜ放置できなくなったのか   「なんのために生きるのか」の喪失  第2節 「労働」「仕事」「活動」と、人間の条件からの逃避   労働・仕事・活動は何を区別するのか   公共空間は場所ではなく関係である   協働の測定は「活動」を「労働」へ落とす   臣民化と超越という二つの逃避  第3節 疎外されない労働はありうるか   疎外は消えず、対象を変えた   奪われるのは仕事より交渉である   協働の公共性とは何か   本書の問いと論証の道筋 第1章 協働はどのように考えられてきたか  第1節 協働を公共として考える系譜   なぜ協働を公共として考えるのか   市民的友愛は何を支えたのか   複数性と「現れの空間」   公共は対立を持続可能にする  第2節 協働を制度として考える系譜   市場以前、協働はどこに埋め込まれていたか   脱埋め込みは自由と孤立を同時に生む   取引と継続体という見方   共有資源の統治から〈共〉の生産へ   協働はなぜ有限な共有財なのか 第2章 市民は登場し、しかし工場労働は置き去りにされた  第1節 所有を持つ市民という出発点   自分の身体は自分のものである   労働は所有の根拠になった   契約は身分からの解放であった   市民像に埋め込まれた所有者の影  第2節 革命と権利の承認は誰を市民にしたのか   宣言は人を権利主体として作った   普遍を掲げながら、誰が排除されたか   自由と平等の間にある友愛   権利の承認と価値の承認を区別する  第3節 工場労働はなぜヒューマニズムの外に置かれたのか   同感は市場社会を支えられるか   分業は豊かさと能力の萎縮を同時に生む   請負から雇用へ――過程の支配権が移る   労働力の売買は何を移転するのか   市民は工場の門前で止まった  第4節 近代の文法はなぜ管理社会と親和するのか   契約化された個人はデータ単位になる   分業はタスク化へ進む   自律は自己管理へ変わる   価値の評価が権利に入り込む 第3章 近代をどう捉えるか――産業主義と思想  第1節 産業主義は世界をどう作り変えたか――収斂のロジック   産業社会は共通の制度を必要とする   「ルールの網」   収斂は西欧化を意味するのか  第2節 自律・承認・疎外――ドイツ観念論からマルクスへ   自律――意志が自らに法則を与える   承認――自由は他者との関係で現実になる   疎外――労働の成果と活動が自分から離れる  第3節 経済と歴史をどう捉えるか――歴史学派・カー・プラグマティズム   経済は歴史の中で作られる   歴史は現在と過去の対話である   利害の調和   行為の中で知り、制度を変える  第4節 ウェーバー――神・天職・脱魔術化   天職は仕事にどのような意味を与えたか   禁欲は蓄積と規律を生んだ   脱魔術化は意味を消し、手続きを残す   鉄の檻からスコアの檻へ  第5節 自律=観照か、複数性=活動か――決定不能という蝶番   判断するために距離を取る   活動は他者の前に現れる   参加と距離を往復する   決定不能を制度の問題へ送る  第6節 AIは近代の自由と規律をどう組み替えるか   自律が自己管理へ変わる   承認が評価へ置き換わる   協働が外部の力として戻る 第4章 トレードの解体とジョブの成立――協働はなぜ共有財なのか  第1節 トレードとは何だったか――交渉される自治的労働   トレードは技能と身分の共同体だった   職務境界は何を守ったのか   ジョブ・コントロール・ユニオニズム   自治は誰を排除したか  第2節 ジョブはどう成立したか――管理可能な職務への解体   請負の解体と直接雇用   雇用官僚制と内部労働市場   ジョブは防御壁でもあった   職務境界の解体と柔軟な配置   エンプロイアビリティは誰の責任か  第3節 取引と継続体としての組織   分析単位を商品から取引へ移す   交渉取引――拒否できる関係   管理取引――命令と服従の秩序   割当取引――集団がルールを決める   ゴーイング・コンサーンとワーキング・ルール   将来価値と労働の所有権移転  第4節 行為の中で知る――制度の改変可能性   習慣は制度を支え、制度は習慣を作る   産業の論理と営利の論理   問題から公共が生まれる   制度は共同探究で改変できる  第5節 交渉の不在化――本書の中心概念   交渉の不在化とは何か   誰が条件を変更できるのか   三つの取引から見た交渉の不在化  第6節 協働はなぜ有限な共有財なのか   技能は個人にも企業にも帰属しない   信頼と注意は使えば減る   企業は果実を得るが、再生産費用は誰が負うか   尊重された個人の協働か、統制を滑らかにする協働か 第5章 協働の功利的利用――金融資本主義の暴走と「王としての企業」  第1節 金融資本主義の暴走と「資本をどう制御するか」   企業はいつ私的政府になったのか   所有と支配の分離   秩序の危機としての労働争議  第2節 独裁・革命・ニューディール――三つの応答   自由放任はなぜ維持できなかったのか   独裁――統一の名による対立の封鎖   革命――所有関係の転覆   ニューディール――対立の制度化   ウィスコンシン学派と合理的価値  第3節 科学的管理法はどう取り込まれたか   組織的怠業と熟練の防御   時間研究と知識の移転   精神革命と交渉の後退  第4節 会社荘園制とウェルフェア・キャピタリズム   企業福祉と労使関係の内部化   温情の制度化と雇用官僚制   「近代の荘園」と協働の囲い込み  第5節 メイヨーのエリート主義とリッカートの参加   企業共同体の理想と人間関係論   自己実現の理想と企業目的   戦時動員と行動科学の巨大化   参加型管理と協働の資源化 第6章 協働の発見と反転――心理を治める道具  第1節 協働システムとしての組織   協働としての組織   誘因と貢献の均衡   権威の受容と無関心圏   組織存続のための協働  第2節 発見はなぜ心理の管理へ反転したか   所属感の生産性変数化   所属感の測定と交渉の後退   企業文化と規範的統制  第3節 労働過程はどう支配されたか   構想と実行の分離   脱熟練化論の限界   知識労働と協働の中で生まれる知識  第4節 戦略と制度はなぜ協働を見えなくしたか   企業境界と価値連鎖   取引費用と階層統治   組織能力と協働の資産化   実践知と権利の空白  第5節 批判はどこへ潜ったか   制度構想から組織内部の批判へ   管理の中立性への批判   職場の公共性と独立した発言   批判と制度の分離 第7章 協働はなぜ日本で公共概念にならなかったのか  第1節 経営側が作った協働の制度   保護から始まった協働   福利・能率・調停の結合   企業内交渉の制度化   職場集団と心の組織化   企業の外へつながる回路の細さ   企業目的の内側に作られた協働  第2節 批判的社会科学はなぜ協働へ向かわなかったのか   国家と階級へ向かった批判   生活と交渉を守る社会政策   管理と交渉をつなぐ細い道   労働研究から離れた主体性   熟練と知識の企業能力化   権限・所有・内面の分離  第3節 協働を分けた学問領域   経営と労働を一つに考える試み   人間問題から人材管理へ   協力の条件として測られる心   仕事から離れる条件の個人化   分かれた知識を結び直す場  第4節 会社の内側に集められた承認   会社身分制が配ったもの   保護と協力の交換   〈一人前〉から向上主義へ   価値を示す場としての協働   会社の外にあった協同の道   制度の歴史が作った空白 第8章 AI管理社会――人間の条件の収奪と交渉の回復  第1節 行動科学管理は何をAIへ渡したのか   人間の条件と管理   交渉取引・管理取引・割当取引   管理知識の蓄積とAIによる統合  第2節 AIによる協働の観察・配分・評価   タスク化とプロセス管理   協働のセンサーとしての業務インフラ   組織ネットワーク診断と企業の視界   動的プロフィールによる採用・配置・学習   年次評価から連続的介入へ  第3節 AI管理による人間の条件の収奪   労働の内部に組み込まれた活動   発言・関係・判断の企業資産化   「活動」の「労働」化   判断権の集中   義務なき荘園   協働の有限性と企業外の公共空間  第4節 交渉の回復   所有制度の変更と残る管理問題   割当取引による管理限界の設定   交渉取引による設計参加   視界・判断権・異議申立ての共有   三つの取引による協働統治   「労働」内部の「活動」と公共空間   コモン論の限界と交渉の公共性 終章 協働を公共へ返す   協働の囲い込み   労働を「仕事」と「活動」へ開く   共同体幻想を超えて   権利と交渉による多元的秩序   有限な人間が問い続ける公共   公共の継承  あとがき  参考文献

著者について

山崎 憲

明治大学経営学部教授。博士(経営学)。東京学芸大学教育学部卒業、明治大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。日本労働研究機構、在デトロイト日本国総領事館専門調査員、労働政策研究・研修機構(JILPT)を経て、2020年明治大学経営学部准教授、2025年より現職。専門は人的資源管理、労使関係論。労務理論学会会長、社会政策学会会員。 主な著書に『デトロイトウェイの破綻――日米自動車産業の明暗』(旬報社、2010年)、『「働くこと」を問い直す』(岩波新書、2014年)、『ジョブ型の真実とAIと協働』(日本生産性本部、2026年)。分担執筆にSkills and the Future of Work: Strategies for Inclusive Growth in Asia and the Pacific(ILO、2018年)、室田信一・石神圭子・竹端寛編『コミュニティ・オーガナイジングの理論と実践――領域横断的に読み解く』(有斐閣、2023年)。

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