高松結婚差別裁判

全国水平社と司法権力の対抗

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「高松結婚差別裁判」とは、狭い意味では1933年6月3日に高松地方裁判所が被差別部落民の被告に対して結婚誘拐罪という差別判決を言い渡した裁判のことである。しかし広い意味では、高松警察署による二人の部落民に対する検挙と取り調べ、高松地方裁判所検事局による起訴、予審判事による予審訊問調書と予審終結決定、公判における検事の論告求刑、これらを前提として高松地方裁判所が言い渡した結婚誘拐罪という判決のことをいう。つまり高松結婚差別裁判は、警察権力と司法権力による明確な部落差別に他ならない。  高松裁判に対しては、現地の香川のみならず全国各地の被差別部落に居住する部落民が抑えきれぬ憤怒を表明し、1933年5月から翌年の5月までの約一年間、全国水平社は、組織の総力を挙げて高松裁判に対して闘った。全水による高松結婚差別裁判糺弾闘争は、多数の部落民を組織するだけでなく労働組合、農民組合、無産政党などと連携しながら、高松裁判を取り消すため司法権力に対抗する全国的な大衆闘争として闘われた、1922年から1942年まで20年間の水平運動史における最大の全国的闘争であった。  また、高松闘争が闘われた1930年代前半は、一方で支配権力による侵略戦争とファシズム化の進行、他方では民衆による生活擁護、侵略戦争、ファシズム化に対する闘い、この二つが基本的に対抗する状況のなかで、全水は高松裁判を取り消すために高松闘争を闘わねばならなかった。  現在のところ高松裁判と高松闘争については、いまだに全体としては史料の収集と精読による本格的な歴史的な検証には至っておらず、極めて低調な状況が継続している。  そこで本書は、蓄積されてきた先行する研究をふまえ、可能なかぎり収集した膨大な諸史料を読み込むことによって正確な歴史的な事実を確定し、副題にある「全国水平社と司法権力の対抗」を軸として、高松裁判と高松闘争について細部と深部にまで目配りしつつ正確な歴史的事実を確定し、濃密な全体像を描いたうえで一定の評価を加えるものとする。  そして、高松裁判は何故に差別裁判なのか、高松闘争は何故に大衆的な全国闘争になったのか、高松裁判と高松闘争は水平運動だけでなく当該期の日本社会に対して如何なる歴史的意味をもっていたのかを、明らかにする。

著者
朝治 武
出版社
解放出版社
読者対象
一般書
内容
日本史
発売日
2026年11月16日
発売日の出典
openBD
価格
4,500円(税込・書誌情報提供:openBD)
ISBN
9784759241334
ページ数
428ページ
判型
四六判

発売まであと31日

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目次

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序 章 なぜ高松結婚差別裁判を問うのか 第1章 結婚の合意と高松警察署での取り調べ   1 坂出港での出会いと結婚の合意による同棲   2 口頭告訴と高松警察署での取り調べ 第2章 高松地方裁判所における部落差別   1 予審訊問での差別語の使用と結婚差別   2 公判と「判決」においても貫かれた部落差別 第3章 高松結婚差別裁判糺弾闘争の大衆的全国化   1 全国水平社香川県連合会の混乱   2 全国水平社の高松結婚差別裁判糺弾闘争   3 各府県における高松結婚差別裁判糺弾闘争 第4章 高松結婚差別裁判に対する法的な理論と要求   1 法令違反を問う非常上告の要求   2 犠牲者の釈放と検事・判事に対する懲戒の要求 第5章 署名運動・闘争基金募集と請願行進の展開   1 大衆的な署名運動と闘争基金募集   2 請願行進の展開と支援した多様な団体 第6章 融和団体と司法権力の対応   1 対応に苦慮する融和団体と司法省   2 司法大臣や検事総長らとの会見 第7章 高松結婚差別裁判糺弾闘争の苦難と終焉   1 香川の水平運動が直面した苦難   2 高松結婚差別裁判糺弾闘争の「第二段の闘争」と終焉 第8章 水平運動の変容と戦後への継承   1 水平運動の新たな模索と変容   2 戦後における高松結婚差別裁判糺弾闘争の継承 終 章 高松結婚差別裁判をめぐる対抗の歴史的位置   1 高松結婚差別裁判に関係した司法権力とファシズム化   2 高松結婚差別裁判糺弾闘争を闘った水平運動と全国水平社   3 部落問題における法律と裁判  参考文献  あとがき

著者について

朝治 武

1955年、兵庫県で生まれる。大阪人権博物館館長。著書に、『水平社の原像』(解放出版社、2001年)、『アジア・太平洋戦争と全国水平社』(解放出版社、2008年)、『差別と反逆―平野小剣の生涯―』(筑摩書房、2013年)、『水平社論争の群像』(解放出版社、2018年)、『韓国歴史ドラマの再発見』(解放出版社、2019年)、『全国水平社1922-1942―差別と解放の苦悩―』(筑摩書房、2022年)などがある。

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