
まだ何もしてゐないのに時代といふ牙が優しくわれ嚙み殺す 1988年、歌集『青年霊歌』でデビュー。バブル崩壊前後に20代を過ごし、短歌という小さな詩型から新しい時代の言葉を立ち上げようと格闘した〈ニューウェーブ〉を代表する歌人・荻原裕幸。 入手困難な初期歌集5冊から厳選の短歌を大胆に編み直し、新たな読者に向けて再構成した、ベスト版アンソロジーが誕生。 【収録短歌より】 生き急ぐたましひに似て曇り日の水銀灯はひねもすともる 政変など起きさうにない春昼に魚の腹裂く音しづかなり われに向ひて光る星あれ冬到る街に天文年鑑を買ふ 人生がまたそこにある人生を視ざらむとして両目を裂かば 少年兵だつたゆめさめ冬の朝心臓にさかなが棲んでゐる (梨×フーコー)がなす街角に真実がいくつも落ちてゐた 空爆のけはひあらざるあをぞらのどこまでもあをばかりのひとひ 戦争が(どの戦争が?)終つたら紫陽花を見にゆくつもりです 恋人と棲むよろこびもかなしみもぽぽぽぽぽぽとしか思はれず 永遠よりも少しみじかい旅だから猫よりも少しおもいかばんを なぜ恋人に刺されるときは膵臓が狙はれやすいのだらうか鳩よ 天使よりも青い論理に満たされてぼくが或る朝ぼくを抜け出す 雲はだめ風もだめ虹も夜もだめ、ここにあるものだけを信じろ ここにゐる、ここを世界の静脈としてみづいろの時間のなかへ
発売済み
2,400円(税込・書誌情報提供:openBD)

