隠喩さみしい

◆第一句集 豆炒つて食べるも自由鬼の春 川森基次さんはまさしく「意志の人」と思われてならない。いま、私たちの俳誌「遊牧」の主要句会の幹事役を担っているが、その仕事ぶりの緻密さはともかく、作品に於いても首尾一貫して映像を重ねてゆく。掲句は掉尾の一句だが、「豆炒つて食べるも自由」はそのことを如実に表していると思われる。これからの展開を鶴首したい作家の一人ではある。 帯・塩野谷 仁 序・鳥居真里子 ◆自選十二句 春の雨有精卵を祈りけり 命脈は波打ち際の桜貝 ヤポネシア密約の梅雨前線 溢るるや鮎とか愛とか身をよぢる 少年蟹忘れがたく泥の河 ふりかへる秋桜も無く鴎の死 ※正字=鴎 秋は落日正気わづかに楕円 文楽めそめそと太夫炬燵欲し 無花果は隠喩さみしいマルコ伝 皮薄き男の矜持蜜柑剥く ※正字=剥 何を聞かれても梟の銃眼 夢うつつ身は逆走の雪しまき

著者
川森基次
出版社
ふらんす堂
発売日
2023-10-13
価格
2,800円(税込・書誌情報提供:openBD)
ISBN
9784781416021

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